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「第二のバシコー の 巻」
 IPHの会社の先輩によるとその後、取り締まりが厳しくなってバシコーは走るやつが
いなくなってしまったらしい。そんなある土曜日の夜、じんじんのところにIPHから
電話がかかってきた。
「くわがたとハサミ虫見に行くぞ。 あとカニ」「あ?」
IPHはいつにない素早さでじんじんの家に迎えにきた。
 なにやら新しく走る場所が見つかったらしい。IPHは先週、会社の先輩に連れて
いってもらったのだが、とにかく事故率が高いという話だった。
ドリフトして横走り(カニ走り)する車がいっぱいいて立木や電柱に正面からぶつかる
と真ん中がへこんで「くわがた」になり、スピンしてケツからつっこむと「ハサミ虫」に
なるということらしい。今夜もその先輩はそこへ行っているとの事だった。
湾岸線357に出るあたりでIPHは無線でその先輩を呼び、案内をしてもらった。
「そー、そのへんで止まらないとコースに入っちゃうからー」
どうやら道の延長上にコースがあるらしい。先輩の案内に従ってIPHはコース手前の
歩道上にシャレードを止めた。
ひほほほほ!突然タイヤの悲鳴が聞こえた。IPHの止めた所のすぐ先がUターン
ポイントになっているらしく、みんなドリドリさせながらターンしていくのが見えた。
「やってるやってる」IPHは車を下りると今度は2Nで先輩と連絡を取りながら
「ギャラリーコーナー」へ向かった。
アウト側のガードレールはすでにぐにゃぐにゃになっている。第二のバシコーは行き止ま
りの手前にある二つの直角コーナーで構成されている。クランクになっている点では前の
バシコーと変わりは無いが、入口から二つ目のコーナーがギャラリーコーナーになってお
り、実質攻めるのもささるのもそこという、見る側にとっては絶好の条件なのだ。しかも
工事現場があって盛土の上で見るのでアウト側でも危険はない。
正に「高見の見物」である。「こんばんはー」その先輩は友達と二人で盛土の上にいた。
「まだ今日はシビックがちっとかじっただけだー」
ほひょひょひょ。ひっきりなしにタイヤの音が響く。「カニ走りカニ走り」IPHは縦に
ふるえながらドリフトしていく車をながめていた。
軽くスピンしてしまう車はかなり多いがみんな紙一重で避ける。先頭の車がスピンすると
後続車も次々とスピンターンをきめあっというまにまた走りはじめる。
「みんなけっこううまいじゃーん、これでささるのかぁ?」じんじんがそういうと先輩が
「ギャラリーがささるんだよ、コースに入ってきちゃってさ、前の車と同じスピードで
コーナーにつっこむの。そーすると・・・ほら」
先輩が促す方を見るとスカイラインのあとに続いてきた92レビンがアウトにめいっぱい
はらんでしまい、縁石を2,3mもこすって更にハンドルをこじったものだからグニョン
グニョンと蛇行して結局ささってしまった。
「やたっ」IPHは喜んだが、レビンのダメージは少なく、そのまま切り返していなく
なってしまった。
 「これはイケル」じんじんはそう思った。
 

「ささりまくり の 巻」
先輩が言う通り、ささる車はギャラリーのようだ。
走りに来ている車は足周りがかためてありハデではあるが確実な走りをしている。
ただハデさが過ぎてささりそうになるのも多い。みんなまだここのコーナーには馴染んで
いない様子だった。
四人は小一時間眺めていたがその間に2台がささり、縁石をかじった程度のが3,4台
いた。IPHは嬉しくてしかたがないといった様子だ。
近くに現場のプレハブがあってその横にジュースの販売機がある。更に裏にはトイレまで
あるのだ!あまりに完璧な条件にじんじんはびっくりしてしまった。
IPHとあったかいウーロン茶を買って戻ってくると、すぐに一台の車がすぅーーーっと
立木に吸い寄せられていった。「おおっ」
ドガシャン「やったーー!!」IPHは一目散に盛土を駆け降りていった。
ささったのは3ボックスタイプのオペルだった。
真っ正面から立木に突っ込んでいて一目で廃車コースであることがわかる。例によって
キャラリーがオペルを歩道からひきずりおろして、しばしコースはSTOPした。しばら
くするとオペルはコーナーの一番奥まで押されてそのまま放置された。
「なんかたいした事ないのにそのまま真っ直ぐつっこんでったよなー」
「ブレーキかけたのかなー」4人はまた土盛りの上に避難して見物態勢に入った。
それから僅か10分後。今度はロードスターだ。ハンドルを切りすぎてフラつき、イン側
にささった。そこには丁度電柱が待ち構えていた。
「おおーっ」ロードスターがまるでウイリーしたように見えたので4人とも声をあげた。
「はねたかぁ?」「いやーなんかすぅーーっとフロントが持ち上がった感じだったぞ」
「なにがおきたんだぁ」「ほらほら、電線見てみ、なんで揺れてると思う?」「??」
先輩が真上の電線を指さすので見ると風も無いのにブンブン揺れている。
そのままその電線をたどっていくと、僅かにゆれる電柱があって、その根元には
ロードスターがうずくまっていた。
「でんちゅーがゆれたのかぁー」「でんちゅーー」IPHはおかしくて腹をかかえて
笑っている。「ぶつかったのかー、でも音がしなかったぞー」笑いがおさまったIPHと
じんじんは盛土を下りてその電柱の方へ行った。
ロードスターはハデにやったわりにダメージが少なく、既に走り去っている。
「あーあー、これだぁー」じんじんは電柱のステー線を指さした。
「ほぉーー」IPHも感心している。ロードスターはステー線のある方から電柱に突っ込
んだために電柱にはぶつからずステー線を1m位登ったのだった。
そのためフロントが持ち上がって見え、電柱もステーに引かれてハデに揺れ、
ロードスターは被害がなかったのだ。
「最近のロードスターって電柱のぼるのかぁ」二人は原因を先輩達に報告してまた見物を
始めた。が、時間も遅くなってきた事もあって車は減り、あまりささらなくなってきた。

「じゃ、今日は引き上げるわ」先輩はタバコを捨てるとそういった。
「えー、もう帰っちゃうのー」IPHは不満そうだ。「まーとりあえず廃車1台出たし、
電柱揺れも入ったってことで・・・満足かな」「ほーい、じゃまた」「さよならー」
「なかなか、話の判る先輩だなー」じんじんはそういった。「電柱揺れで満足するあたり
がいいねー」「だろー?」二人は寒さに震えながら見物を続けた。
 

「過激バトル の 巻」
「なんかつまんねーなー」「やっぱ先輩が正しかったかぁー」「あの人通ってるからな」
先輩が帰ってからもう20分経つが、一向にささる気配がない。
「ウーン」「帰るかぁ」IPHがあきらめかけた時、変な車がコースインしてきた。
ボンボボ、ボンボボ、ボンボンボンボボ・・・「なんだなんだぁ?」「族かぁ?」
「げげっプレッソだ」「おぇえ?」赤いプレッソはコースを蛇行しながら無意味に
吠えたてた。さながら族のようだったが一周すると普通にコースを走り始めた。
「あのプレッソかなー」「だろーなー」プレッソは前が空くと、コーナーを2回転スピン
でぬけていくとか、かなりハデな走りをみせた。
「あいつ、うまいなー」IPHは感心している。
「もぉおおぉおお〜」突然プレッソの後ろのスカイラインが「動物クラクション」を
鳴らし始めた。
「んん?なんか今鳴かなかったかぁ?」「あのスカイラインじゃないかなー」
「動物クラクションかぁ」「イヌの鳴き声とかやったらどーなるかな」じんじんはそれを
期待している。スカイラインはプレッソをびっくりさせようとしているのか、プレッソが
コーナリングしている時に「もぉおおお」とか「こけこっこー」とかやるのだ。
しかし、プレッソは特に驚いた様子もなく走っている。
「やっぱ、そーおもう?」IPHも同じ事を考えていたようだ。しかし、期待に反して
スカイラインは動物のクラクションをやめてしまった。
「あれーなかなくなっちったなー」「なけっっ!!」  「わんわんっ!!」じんじんが
鳴けと言った直後、スカイラインが鳴いた。プレッソはタイヤを完全にロックさせて
横滑りしていった。
「ささるかっ!」プレッソは180°反転して軽く縁石にはりつき止まった。
よほど動揺したらしくギアをいれたままセルを回したり、何回もエンストしたりしている
「ぎゃはは」 「だせーやっぱあれはのりじゃねーのかぁ」「いぬぅーー」
プレッソはスピンターンで向きを変えると、そのままそこにじっとしていた。
「ほらー、FFだったらあれ出来ないぞ」「なんだ?どっかイカレたのか?」
「呼吸整えてんじゃねーのかー」プレッソはスカイラインを待っていたのだった。
スカイラインが回ってくると、プレッソは4輪から白煙をあげて発進。後続のシビックに
体当たりする様な勢いでスカイラインの後ろに割り込んだ。プレッソはガウガウと吠えな
がらスカイラインを威嚇した。ライトをハイビームにして、ロータスとのバトルの再現の
ようだ。スカイラインも強か者らしく、焦る様子もなく走っていた。
しかし、あまりにプレッソがしつこいためスカイラインもクラクションで応戦に出た。
「わんわんわんわんわん!」キキーーッ!プレッソが急にブレーキを踏んだので
後続の車が2,3台カマをほった。
「やたっ」一瞬プレッソは前につんのめったが再び猛ダッシュでスカイラインを追った。
「わんわんわんわんわんわんわんわんわんわんわん」
スカイラインは殆どひっきりなしにクラクションを鳴らした。
プレッソは荒れ狂い、テールをボコボコ、ガードレールにぶつけながらスカイラインを
追った。
ガツーン、ガツーン・・・ついにプレッソはスカイラインのテールに体当たりした。
あまりに過激な攻めを見せられたため、ついにIPHの振動数は街路灯のチラつきに追い
ついてしまい、見た目には爪先立ちで静止しているかにみえる。

ついにスカイラインが逃げた。コースから出てしまったようだ。プレッソもコースには
帰って来なかった。
2台の高らかなエグゾーストがだんだん遠ざかる。「おいおい、どっかいっちゃったぞ」
じんじんが遠くを見た。IPHは「追う? いぐ?」とじんじんに同意される事を
前提とした質問をした。
「いぐぞいぐぞ」じんじんはIPHをおいたてた。
 
 

「激突! の 巻」
 「どっちに行ったかなー」「とりあえず左いくか」IPH達は幕張の方へ向かった。
しばらく行くと京葉線が見えてきた。まもなく幕張メッセだ。その裏の方ではゼロヨンが
行われている。
「いねーかなー」信号を待ちながらIPHはきょろきょろしていた。
 フォーーーン、フォーーーーン・・・・・ 「おおっ?」「いたいた」
目の前をスカイラインとプレッソが物凄いスピードで横切っていった。
「それにしてもちっと速すぎなかったかぁー?」IPHは左折すると2台を追ったが、
すでにプレッソのテールランプは小さくなって、パッ、パーっとブレーキランプが光った
かと思うと素早く右折していった。「はえーー」
IPHは2台が曲がったカドより三つくらい手前を右折した。
「どーせ飛ばしてるから左折はしないだろ」右折、右折でくれば戻ってくるから先回りし
ようというのだ。真っ直ぐ行くと京葉線の高架にあたった。
ここにいれば来るはずだ。「こないなー」しばらくそのT字路で止まっていると前の道が
明るくなり、その直後ビャッ、ビャッと2台が通過した。
「ほーらな」「ほんとっすかー??」IPHのいい加減な予測はこういう時に限って
当たるものなのだった。シャレードは慌てて2台を追う。
 京葉線に沿った道は幾つもの路地と交差していて、普通なら一時停止しないと危なっか
しくてしかたがない。2台はそんな道を高速道路でも走っているかの様な勢いですっとん
でいった。「ちっとおいつけねーなー」
しばらく行くと前方にプレッソらしき車が止まっているのが見えた。
「あれプレッソじゃねーか?」プレッソは少し斜めになって道の真ん中にとまっていた。

良くみるとプレッソのスリップ痕が10m位路面にのこっている。
「???」プレッソはシャレードが来た事に気づくとまた4輪から白煙をあげて発進、す
ぐさきの道を左折していった。「なんだぁ??」
「じこったか??」「そーでもなさそーだったけどなー」「そーでもあるぞ!」
シャレードがその交差点まで進んで行くと、そこは十字路なのだが中央分離帯があって、
事実上左折ONLYのT字路になっていた。  見ると中央分離帯の植え込みはメチャメ
チャになっていてその左向こうのガード下にスカイラインが激突していた。
「ばかやろーーーっ」スカイラインの男は小さくなっていくプレッソに叫んでいた。
「あ〜あ〜」「つっこんぢゃったのね」二人は、しばし大破したスカイラインを眺めて
いたが、パトカーが近づいてきたのでお暇する事にした。
「のりんちいってみるかぁ?」「だから、あれはのりじゃないって!」
今日はかなり時間も遅いので二人は帰ることにした。

「しかし、第二のバシコーは激しいなー。毎週あの調子なわけ?」じんじんは久しぶりに
面白いものを見れて満足げであった。「まー、プレッソが来たのは始めてだけど、
だいたい金土日で10台平均でささるなー」「ふーん」
二人は市川橋の上でそんな会話をしていた。ふと前を見るとなんと左の2,3台前に
赤いプレッソが走っているではないか。
「おいおい、あれ」じんじんが指さすとIPHはうれしさのあまり左右に蛇行した。
「ほんとに ほんとに あのプレッソだとおもうぅ?」
「だってリアのあたり結構へこんでるぜー」「つけるか」「いぐ?いぐぅ?」
IPHはまた同意を求めた。
「いけいけー」二人はそのまま赤いプレッソを追った。
 
 

「追跡 の 巻」
 プレッソは橋を渡ると蔵前橋通りを直進していった。
時折、信号待ちでムダに吠えたりホイルスピンさせたりしている。
「なんか荒れてるなー」「まだイヌの事が頭から離れないのかな」
「クラッチの使い方しらねーんだろー」シャレードは2,3台おいてプレッソをつけた。
夜中で車は少ないから見失う事は無いが、気付かれないかが心配だった。なにしろあの車
に追われて廃車になった車を2回も目の当たりにしている。
しかも今夜は手負いの狼・・・いやイヌなのである。とてもこのシャレード「そしある」
ごときで太刀打ちできる相手ではなかった。
 しばらく行くと新小岩、たつみ橋交差点でプレッソは右折レーンに入った。
信号はもうそろそろ右折青になるところ。「斜め道かなー、平和橋かなー」
ここの右折は二種類あるのだった。シャレードはどちらにも対応できるように少し間を
おいてレーンに入った。
 ところがプレッソは何を考えたのか交差点に向かって猛然とダッシュしたかと思うと
タイヤの悲鳴を響かせながら交差点の真ん中でアクセルターン。
270°回転すると新小岩駅の方へ曲がっていったのだ!
「おいおいおい!」IPHは予想外の展開に対応出来ずそのまま平和橋通りを右折して
しまった。「なんだなんだ?」じんじんは後ろを向いてプレッソを探した。
IPHはすぐに気を取戻し、サイドブレーキターンで方向転換。平和橋通りの方が丁度青
に変わる時なので、そのまま追える・・・はずだった。
シャレードはターンした瞬間エンスト。「オートマなのにエンストするなよー」
「だせーくるまぁー」
きゅるるるるる・・・
「あ〜ぁ、交番の真ん前でサイドブレーキ引いた挙げ句・・・・・にげろにげろ!」
突然じんじんがIPHをゆさぶった。
「あ?ぁあ?  おおーーぉ!」IPHは顔を上げるとプレッソよろしく猛然とダッシュ
した。たつみ橋の交番から警官が警棒振り上げて走り出てきたのだ!
左手の人指し指は明らかにシャレードを指しており、聞こえないが何やらわめいている。
「びっくりしたーぁ まさか追ってこないよな」
二人は交差点を渡った時に後ろを確認した。
「来ない来ない。自転車で追って来たりしてな」
しかし、よーく見たら赤色回転灯をつけた凶悪な乗り物が交番の脇からヌルッと頭を出し
た。「ゲッ!」IPHはシフトレバーをLにまで落として再加速した。
「走ってくれぇー」 ぶおおおお。
「そしある」のエンジン音はむなしく高くなったがちっとも加速感をともなわなかった。
「とにかく他方面へ逃げよう」じんじんはこんな時に警察無線を聞いていた事が役立つと
は思わなかった。「でもこの場所から7方面ぬけるのって難しくないかぁ」
「千葉が一番ちかいかなー」「とりあえず左折しないと小松川署が近くなっちゃうぞ」
さっそくシャレードは闇雲に路地を左折した。
「おいおい、ここ進入禁止だったぞ」「何でもアリアリ」「車来たらどーすんの、ほら」
あっさり前から車が来てしまった。その車は「ここは一通だぞ」と言いたいらしく、
スカッとライトをハイビームに切り替えた。
「来たら曲がればいい」またシャレードは闇雲に路地を曲がった。曲がる時、じんじんが
体をひねって後ろを見ると丁度パトカーが船堀街道から左折してくるところだった。
「おーお、これで今の車がフタになるな」「でろ?」
「でも、安心は出来ない。ここも一通だ。」「ぎゃっこー??」
「標識見てみなよ、みんな裏だぜー」 「ならまた曲がるまでだ」
「今どっち向いて走ってんだぁ?」「前だろー」
シャレードはとにかく東の方へ、南の方へ逃げた。もうパトカーの姿は見えないが、
どんな手配が出されているか分からなかったし、いつそこの路地からパトカーがヌルリと
出てくるかと思うと、取り合えず千葉県に入るまでは気が抜けなかった。
 
 

「吉野家 の 巻」
「なみ」
「おーもりいっちょなみいっちょつごーなみにちょ」
シャレードが京葉ロードにのってホッとしているころ、プレッソの男は新小岩の吉野家で
牛丼をほおばっていた。
男は別にわざと右折レーンから左折したのではなかった。レーンに入った瞬間牛丼が食べ
たくなっただけだったのだ。
「いやいや、こんな所でガッちゃんに会うとは」
プレッソの男に話しかけたのは、なんとのりあにだった。
「へへへ、今日は車べこべこにしちゃって・・・」
「あー、見た見た。なんか後とか横とか随分へこんでたね。 一回であーなったの?」
「こまごまと何回かぶつけちゃってね。」「またバシコー?」「そ」
のりあにと親しげに話すこのナゾの人物「ガッちゃん」とは!???
まて次号!
「よってく?」 「あーうー、じゃーおぢゃましてしまおかな。今日のビデオでも見てみ
よーか」のりあにとプレッソの男は吉野家を出るとのりあにの家へいった。

 「これ何キロで走ってんだ?」「MAXで150くらいしか出してないよ」
プレッソの男は助手席にビデオカメラを積んで走っている時の様子を写していたのだ。
場面はスカイラインを追って海浜幕張のあたりを走っている所だ。
「150って、下道だろー」「このあとが面白いんだってば」「??」かなりのスピード
で走っていたのが突然のフルブレーキ。車体が横に流れ、ずれる画面の中で突然跳ねるス
カイライン。「うーん、いまいち良く写らなかったな」「おおーっ何がおきたんだー」
「中央分離帯にささったの」男の説明でのりあにはIPHの様に納得した。
「いっつもこんなの撮ってんのかぁ?」「ほかにも有るから貸してあげるよ」プレッソの
男はビデオを3本ほど置いて眠いからと帰っていった。

 「ここまでくれば平気だろー」「そりゃーまータイヤ鳴らしただけの車追って
九十九里浜まで来るパーカーはいねーわな」IPH達は家に帰るはずが太平洋からの
日の出を見るハメになってしまった。
「バカプレッソーーーーーー!!」じんじんが海に向かって石を投げた。
「ゆーひのばかやろー」
「あさひぃ」
「ねるかぁ」二人は車に戻るとシートを倒し寝てしまった。
 

「世の中狭すぎ の 巻」
第二のバシコーが走れなくなったのは、それからわずか一ヵ月後だった。
コースにはシマシマが入り、コーナー手前には小さなキャッツアイが埋め込まれたのだ。
しかし閉鎖までのわずか三ヶ月足らずの間に100台もの車が自走不能に陥ったのだ。
もったいない。壊すなら一台くらいくれてもいいじゃないか。
その間、IPHはミチコや星君なんかも連れて行っては今日は何台ささったのなんのとじ
んじんの所に報告していたのだった。
そんなある日、のりがIPHとじんじんとタカシに招集をかけた。
「あにのうちでビデオ見ようと思ってーうーぁー」
のりは相変わらず許しを乞う様な言い方で電話をかけてきた。「すぐいくよ、5分後ね」
じんじんは歩道橋を渡って都営の駐車場を横切ればすぐのりあにの家へ行く事ができた。
「これーはべんり・・」何がどの様に便利なんだろーか。
「いやー、なかなか面白いビデオを手に入れたんで是非見せたくてね、特にIPHに」
のりあにはビデオをセットしながらそんな事をいっている。みんなはOKLの出してくれ
たお茶を飲みながらテレビの画面に見入った。
 「バシコーじゃん!」始まってから10秒もたたないうちにIPHが叫んだ。
「おお、もう分かったかぁ、さすがだな」「なつかしーな、初代バシコーだ。のりあに走
りに行ってたのぉ?」IPHは体を乗り出して画面を見ている。
「あーいやいや、知り合いが良く走りに行ってて、そいつが録ったんだ」「ふーーん」
「あれ?もしかしてこの時いなかったか?」画面にちょこっとスターレットが映ったので
じんじんが反応した。「いつぅ?」IPHはあまりに行きすぎてどれがいつだったか分か
らなくなっている。「ほら、鈴木さんと3人で行って、ロータスがトンだ日」
「おおー?知ってるのかぁ?」のりあには見せようとしたメインの事をあっさり言われて
しまったので驚いてしまった。
「あーあーあーあんときかぁー、スターレットがささってシケイン作ってたときぃ・・」
「俺たちも映ってるんじゃねーか?」「うーんギャラリーはいまいち見えないなぁー」
「前はZかぁ」「結構うまいなー」
ときおり画面の端にドライバーの肘が見え隠れしている。
「おっと、Zはおしまいかぁ、次は?」「かなり前に1台いるなー」「Zの前になんかい
なかったけかぁ」「いたよーな気もする」「同時に抜けたかな」「次は?」
「おおっロータス!!」IPHは椅子を蹴飛ばす様に更に乗り出した。
「まさか目の前であの事故がぁ?」
「そう、偶然こいつの真ん前でロータスが事故ったらしいんだ」
のりあにが説明を入れたが、皆画面に夢中になっていてあまり聞いていなかった。
「まてよ・・・」やはりタカシが最初に気付いた様子だ。
「てことは、この車プレッソか??」
「そー、よく分かってんじゃーん、よっぽど良く見てんだなー」
「おいおい、この時は2台でバトルしてたんだってばー」
「そーなのか、ビデオだと全体がわかんないから・・・」
「ちょーーっとまったぁ、知り合いって言ってたよねー」
「うん」
「プレッソの・・・」「あいつ2回見たんだよなー」
「3回だよ、3回目は追跡してちぎられたんじゃん」
「そーだよあいつのおかげで九十九里まで行くハメになったんだー」
「えええーっ??」のりあには余りに皆がプレッソに係わっているのにびっくりドンキー
であった。
「この車すげーインチキだろー、4駆で4WSのプレッソなんてアリかよ」
「げげげげーそこまで知ってるのかー」のりあにはブッたまげてしまった。
「だれだよこいつ、実はノリとか言うんじゃねーだろーなー」
「あーうーあー、似てはいるけどぉー」
のりがモゴモゴ言っているうちにのりあにが名前を言った。「鈴木学徒・・・」
「がくとくぅーんんんん??」*5今度は皆がぶったまげてしまった。
 

「会計事務所の地下 の 巻」
 鈴木会計事務所に学徒君がいるというので、4人はビデオもそこそこにのりあにの家を
出た。鈴木会計事務所の3階は、のり兄弟が住んでいたのだが現在はええちゃんの占領下
にある。
「雨宿り」とか「トイレ」のために立ち寄る人間も無く、平和な毎日であるらしい。
三人は当然、その三階に「学徒」なる人物がいると思っていた。
ところがのりは玄関の正面の階段の一部を持ち上げ、地下に入っていくではないか!
「こんなとこあったか?」
じんじんは久しぶりに訪れたのりの家の変貌ぶりに唖然として言った。
「駐車場が高くて、地下にガレージ作ったんだ」
階段を下りきるとセドリックとプレッソがならんでいるのが見えた。
「おいおい車はどうやって出入りするんだよ」
たかしは会計事務所の構造を考えながら言った。
「となりのラーメンやの中に出られる様にエレベータがあるんだ。あそこつぶれちゃって
さ、厨房の所だけ売ってもらったんだ。」
「ほんとかぁ〜?」IPHは信用ならないといった顔をしている。
「ガッちゃん」のりが呼ぶとプレッソの下から学徒君が現れた。
「げけつ!」「ほんとだ」
「あ、ごにごにの人達ですね」学徒くんは立ち上がるとにやにや笑った。
「学徒くん、街道グランプリ何周まわった??」IPHが質問すると学徒くんは
1,2秒考え、「ぐるぐる」と頭の悪そうな事を言った。まぁ街道グランプリなど
その程度のものなのだろう。
「ひまだったらお茶でもと思ったんだけど」のりが珍しく人の会話に割って入った。
「そだね、ここじゃナンだしね。着替えて上にいくよ」
のり達は階段で3階に上がった。学徒くん自身はガレージの奥の部屋住んでいるらしい。
ええちゃんの部屋が一番広いので、のりはええちゃんの部屋に皆を入れた。
 しばらくすると学徒くんが上がってきて、そのあとのりかーちゃんが飲み物とお菓子を
運んできてくれた。
「あらあらあら、まーたくさんいらっしゃって。みんな学徒さんのお友達なの? あらら
じんじんさんもいますねー。」
のりかーちゃんは階段の途中から襖に手を延ばして、顔だけ現れるのが常であった。
飲み物を用意したのだから人数位は分かっていただろうが、実際に人がいるのを見てたく
さんいるのを実感したのだろう。
「バシコーで暴れてるの全部見てるんだぜ、知ってたぁ?」
のりかーちゃんがひっこむとIPHが早速きりだした。
「いやー誰かは来てるんじゃないかとは思ってましたけどぉ・・・」
「今晩、いく?」
「いいですよ、べつに」
「いぐいぐ? よーし、はださんも呼ぼう。電話電話!」IPHは何がそんなにうれしい
のかバタバタと落ちつき無くのりに電話機を催促した。
 電話が終わるとIPHは「はださんとあとバシコーで走ってる知り合いも一緒に来るっ
てさ、180SXらしいけど・・・」と呼吸もままならないといった様子であった。
5人は3,4時間バシコーの話題で盛り上がると、今度はガレージでプレッソを見物。
いじりかけだったプレッソをなおすとバシコーへと向かった。
 

第三のバシコー の巻
 5人は新小岩の吉野家で腹ごしらえすると、京葉ロードで江戸川を渡り、市川から一般
道で原木のインターを越え、湾岸ロードの手前あたりで止まった。ここで「はださん」と
待ち合わせなのだそうだ。
「はださん」はIPHの会社の先輩で、IPHにバシコーを仕込んだ張本人である。
10分ほどするとシャレードの無線機がザクザク鳴った。
「はださんかな」IPHは車に戻ると、なにやらマイクに向かってしゃべりはじめた。
「そろそろ現れるみたい」IPHはそう言うとはださんが来ると思われる方向を眺めた。
「きたきた」はださんのジェミニと友達の180SXが近づいてきた。はださんはスパイ
ク履きっぱなしで、バキバキ音をたてている。
「どーも、こんばんはー、かれが180のカイくん」はださんは180SXの友達を
皆に紹介した。カイくんは普通のなりをした青年であった。
 再びみんな車に乗るとはださんを先頭にバシコーへと向かった。
「はださんの知り合いだっていうから、1km先からヤクザだってわかるくらいの人かと
思ってた」じんじんは以前IPHがはださんの知り合いに会った時の話を思い出していた
らしい。「走り屋はひとがいい」たかしは笑いながら独り言をいっている。

 バシコーの舞台は周回コースの「第三のバシコー」となっていた。1周数百メートル、
倉庫の周りを左周りでまわる。道幅は十分にあったので、第二のバシコーのように
「ささりまくり」というわけではなかった。のりたちが着いた時にはすでに各コーナーは
ギャラリーでうまっていた。とりあえず岸壁に車を止めると7人は近くのコーナーで
走っている車をしばしながめた。
「そろそろ出ないの?」はださんがカイくんをグイと押した。「ここで見てるから走って
きなよ」「ここっスかぁ? 2コーナーあんまし得意じゃないんスよ」
カイくんが車に戻るとIPHが 今の聞いたか という顔をした。「2コーナー!」
「ここは2コーナーだったんだー」「やっぱ走ってると違うなぁー」「じゃ、あそこは
1コーナーかぁ」たかしとじんじんはIPHのまねをして「ほぉーーー」と感心した。
3人はまさか各コーナーにそんな呼び名があるとは思わなかったのだ。
 何台か180SXは走っていたが色が違うのでどれがカイくんかはすぐわかった。
何周かするとカイくんは戻ってきたが、はださんにサスのセッティングを見てほしいとか
でまたすぐいなくなってしまった。
「なんか臨場感あるなー」「セッティングかぁ、”2コーナー”に合わせるのか?」
4人はわいわいやりながら走っている車を眺めていたが、学徒くんは真剣な顔つきで
だまっていた。はださんを乗せたカイくんの180は5分おき位で現れ、普通に
まわったり、アウトにはらんでささりそうになったり安定しない走り方をしていた。
 しばらくすると突然けたたましい排気音の車が1コーナーを回ってきた。
「きた!」
学徒君はその音を聞くとピクッと反応した。第三のバシコー最速の3台が現れたのだ。
先頭からレビン、ソアラ、チェイサーの順で2コーナーを回っていった。
見ていると、この3台は圧倒的に速く、ドリフトも安定していた。
「はえーなー」「コーナーに向かってくる時の迫力が違うな」「ラインどりもうまい」
「うん、めいっぱい道幅使ってる」「おーっ!みたみた?ソアラのブレーキディスクが赤
く光ってたぜ」「すげー」「あれ? 学徒くんは?」「さっきまでいたのに」
「出走カッ!」「ほら」IPHが指さす方を見ると彼のプレッソがゆるりと2コーナーを
まわっていく所だった。
 

「プレッソの実力 の 巻」
 コースに出たプレッソは特にハデな事はせずにたんたんと走っていた。
カイくんの車は全然戻ってこなくなった。裏でささったか、”セッティングが出ない”
のか・・・
例の3台は相変わらずみごとな走りで、次々とくるまをパスしていく。
プレッソが5,6周したあたりで3台はプレッソの前にでた。
突然プレッソはペースアップ。3台をプッシュしはじめた。4台続けての4輪ドリフトは
かなり迫力があった。「すげー」「FRにも切り替わるのか??」「そうらしいけど」
「インチキクセーなー」
 そんな事を言っていた次の周、1コーナーをレビン、ソアラ、プレッソが回ってきた。
チェイサーがいない。プレッソが少し遅れている所をみるとチェイサーがミスって抜けた
のだろう。
ひひひひひひというタイヤの悲鳴に混ざって、突然プレッソのエクゾーストが響いた。
「おおっ!」1コーナーから2コーナーの短い直線でフレッソは先頭のレビンのインに
並んだ。レビン、ソアラはいつものラインで大外からインにきりこんでくる。
その真ん前を横切る様なかたちでプレッソがラインをクロスさせた。
「ささるぞ!?」IPHは一瞬あとずさった。プレッソは幻の多角形コーナリングを披露
し見事に2台の前に出た。
「お、おおお???」IPHは絶対ささると思ったのに見事に立ち上がっていった
プレッソを呆然と見送った。倉庫の向こう側からもプレッソのけたたましい音が聞こえて
くる。「おーーっ!もう回ってきたぞ」プレッソはライトをハイビームにしたまま、他の
車をアウト側からごぼうぬきしてくる。
1コーナーを回ると、直線の縁石から5,6センチの所を物凄い勢いでぶっとんできた。
ギャラリーがバタバタ後ろにさがる。 「うわわわわ」4人も思わず逃げたが、逃げる間
も無くプレッソはコーナーをぬけていた。
一番アウトのラインをドリフトもせずにグルリとまわったらしい。
「ひえー」「殺す気かぁー」振り返ったのりに頭をぶつけられたたかしがしりもちを
ついた。「いててて」「なんかおっかねーな」「いてえよお」「あうあう」
そんな事をしているうちに、レビンとソアラが1コーナーから出てきた。そしてなんと
その直後にはプレッソが・・・
「エッ?」のりが嗚咽をもらしている間にプレッソは直線で2台を抜き去り何がなんだか
わからないがとにかく2コーナーを抜けていった。
プレッソの走りに気を取られたレビンがミスしてソアラはスピン。幸いささりはしな
かったが、後続のスカイラインが止まったソアラを避けようとしてアウト側に止まってい
たトレーラーにつきささった。
「・・・!!」とにかく一瞬の出来事でIPHはついに呼吸停止に陥った。
 ささったスカイラインにわっとギャラリーが集まったが、プレッソの音が1コーナーに
近づくとバラバラといなくなった。再びプレッソが2コーナーを回った時、ソアラはまだ
切り返ししてコースに戻ろうともがいている所だった。
物凄いスピードでコーナーをクリアするプレッソにびっくりしたソアラはガホッという音
とともに歩道に乗り上げてしまった。
2コーナーのあたりは騒然とした雰囲気につつまれた。
あっけにとられていると・・ もうまわってきた。今度はレビンの真後ろについている。
レビンは太刀打ちできないので道を譲るのだが、執拗に真後ろを走ってくるのだ。
止まればぶつかられるので走らざるをえない。
焦ったレビンはインに切り込みすぎて左前足を縁石にぶつけた。
ドーンという音とともにレビンははね上がり、ひっくりがえりはしなかったものの着地後
スピンして再び縁石に体当たりした。
プレッソはインには行かずアウトいっぱいをぐるりと回っていったので、傍目にはレビン
が勝手に事故った様にみえる。
既にIPHの瞳孔は反応しなくなっていて、体だけがむなしく痙攣していた。
 

「バシコーの最期 の 巻」
 レビンがぶつかった直後、はださんとカイくんが戻ってきた。
「いやーすごいすごい、裏の方メチャメチャ!」
はださんの話によるとコースの裏はプレッソにビビった車が十数台自滅しているらしい。
「道の真ん中はあいてるんだけど、ぐずぐずしてるとすぐヤツが回ってくるからさぁーな
かなか帰れなくって」
はださんは死後硬直がはじまっているIPHに裏の状況を詳しく説明した。
 ボンボボ ボンボボ ・・・ 誰も走らなくなったコースをプレッソがゆっくりと蛇行
しながらコースをまわってきた。
「ウイニングランだ」誰かが後ろでそんなことを言っている。プレッソが最後にコースを
ゆっくり回るのを知っているギャラリーなのだろう。
 プレッソが通過したあと、1コーナーの方から歓声が聞こえてきた。見るとさっきソア
ラを避けてささったスカイラインが、回ってきた。フロントガラスは無くなり、そこから
助手席の友達が上半身を乗り出してギャラリーに手を振っている。
ボンネットがへしゃげて山の様にふくらんでいるので、運転手も横から顔を出して運転し
ているではないか。
「ひゅーひゅー」2コーナーのギャラリーも笑ってそれに答えた。
 ウウゥ〜「そのスカイライン、整備不良で捕まえるぞ!」ついにパトカーが現れた。
これだけ大騒ぎになれば当然出てくる。「ここはレース場じゃないぞ!帰りなさーい。」
例の決まり文句をわめいている。ギャラリーはばたばた車に戻った。
「とりあえず、戻ろう」スカイラインのギャグで無事、蘇生したIPHが言った。
 岸壁から道に出るあたりはギャラリーで渋滞しているので、IPH達はコースに出た。
ぐるっと回ってみるとはださんの言ったとおり、事故車だらけであった。
ブバン、ゲロゲロゲーー、ワルそうな排気音とともにプレッソが後ろに付いた。
「ひー、こわいよー」たかしは脅えきっている。
 湾岸ロードに出たあたりで、はださん、カイくんと別れIPH達は途中の
リンガーハットに入った。車から下りると学徒くんはまた元の顔に戻っていて、
「すごいたくさんささってたねー」とまぬけな事を言っていたという。

 その後、第三のバシコーは閉鎖され、バシコーは第四、第五と場所を移したが、今まで
の様な盛り上がりを見せる事はなかった。
 そのころ、幕張付近の0−4地帯にも異変が起きていた。道をせき止めて0−4を
やっていた車、さらにギャラリーまでもが全員検挙されたのだ。
そのさわぎでは逮捕者も出て県警では付近での0−4を一切禁止した。
現在は中央分離帯などに、その事が書かれたたて看板が置かれ、昼間から白バイが
うろうろするという状態になってしまったのだ。
 学徒くんはあれ以来、ガレージでひたすら車の改造をしているらしい。
のりの話によるとボディを完全にばらばらにして、エンジンまで下ろしてしまっていると
いうのだ。いったい何を企んでいるのやら、恐ろしくて話しかける事も出来ないらしい。
 そしてIPHの興味も13号埋め立て地に集まる高校生、いわゆる「バリマ野郎」達に
移っていった。
 
 

*5 サーキットのイヌとは別の「がんばれ学徒くん」だったかなー の主人公で
   小田原厚木道路走行中にタイムスリップし、「街道グランプリ」真っ最中の
   首都高湾岸線に現れた。
 

- つづく -


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