大ガードの夜景 第57話  『 イツーと鉄砲 』

8月に入っても京子の胃痛は弱くなったり強くなったりを繰り返し
スッキリしなかった。痛く無いときもムカつきはあって一日何も出来ない日も
多かった。朝調子良かったのが昼には最悪になり起きていられないとか、結構短い
周期で痛かったり治ってたりを繰り返していて京子は「ストレスで胃が痛くなりそう!」
とバカな事を思った事もしばしばあった。
それでも調子のいい時を狙って、ベビースイミングの見学に行ったり
新小岩のコヤマミッドナイトバーゲンにも行って小春用のオモチャを買ったり
研究室の同窓会にも顔だして、仲人をしてくださった先生に小春を会わせたりと
結構いろいろとやっていたのだった。

小春は八月の第二週からプールへ行き始めた。京子が胃痛のため、じんじんが
連れて行ったのだが、夏休み期間とは言え平日の昼間に乳児をプールに連れて来る
のはママばかりで、じんじんは明らかに浮いた存在だった。当然若いママが多いワケ
だが、なにせ連れているのが、まだつかまり立ちもおぼつかない赤んぼなので
余計な事に気を使っているヒマは、ジャグジーで体をあっためる時くらいしか無かった。
ムフフ
小春は普段からお風呂で結構手荒く扱われているせいか水をこわがる様子も無く
楽しそうにしていた。
男子更衣室にはベビーベッドが無いので、じんじんは職員の更衣室を借りて着替えをした。
「ちぇ、一人だからドサクサまぎれに混ぜてもらえるかと思ったのに」
小春は楽しかった様だが、じんじんはつまらなさそうだった。

その日の昼
先日のコヤマミッドナイトバーゲンで発見した巨大水鉄砲を持ったのり
店番をしている京子を襲った。
「タテシナ用に」ということで先発する京子の所へ持ってきたのだった。
それにしてもデカい水鉄砲で射程距離もさることながら、射出される水量がハンパではなく
狙われたらかなりヤバかった。
のりの話では「地面も掘れる」ということだが「事実上風呂場以外では使用不可」であり
去年のタテシナまでに使われていた兵器に対する抑止力にはなるかも、という
ほぼ核兵器と同値のシロモノだった。

そして次の日、その水鉄砲を含めタテシナの準備。不安は京子の胃痛だけだった。
今年のタテシナはじんじんが会社を休んでいることもあって、また一週間だらけるという
目論見なのだったが・・・。

- つづく -