大ガードの夜景 第2話  『 気のせい? 』

ツーリングから戻った二人は友人と近所のファミレスで夕食兼お茶をしていたので
実際家に戻って来たのは深夜遅くになってからだった。
にもかかわらず、じんじんは玄関のドアを閉めると
荷物を部屋の奥へ運ぼうとしている京子をそのままベッドへ引っ張り込んでしまった。
「ア〜レ〜〜」京子のひょうきんな声が響いた・・・

「あれ? 血がついてる?」
ベッドから起き上がった二人が見たのはシーツに残った血痕だった。
「もしかして、始まった?」じんじんにそう聞かれた京子は言葉を濁した。
「なんだ・・・」京子はちょっと残念に思ったが、じんじんには何も伝えて無いので
それ以上何も言わなかった。

しかし次の日「始まった」と思っていた出血は止まり、代わってなんともいえない
吐き気が京子を襲った。げーっとなるが、何が出るわけでもない。今まで経験の無い吐き気。
「昨日の出血はなんだったんだろう、でもこの吐き気ってやっぱり・・・」
京子は事をはっきりさせたいと、一人薬局に行き検査薬を買ってきた。しかしちゃんと
判定出来るのは遅れてから一週間以上、つまり今週末までは使えないという事になる。
「しばしの辛抱か・・・」せっかく勇気をふりしぼって買ってきたのにすぐ使えず
京子はがっかりした。

連休が終わり会社が始まると、じんじんはすぐに九州へ出張してしまった。
つい何日か前にバイクで走っていた九州に仕事で行くというのも、なんか変な感じだと
じんじんは出がけに言った。しかし、京子はそんな事より、この気になる体の異変に
一人耐えなければならないのがつらかった。高々2日間ではあるが・・・

土曜日の朝、京子はじんじんに「遅れてる事」を告げ、検査薬を試してみる事にした。
オシッコをしみ込ませた検査紙の納まったケースに見入る二人。
果たして検査結果を示す窓の点はみるみる赤く染まり妊娠の可能性を示した。
「やたっ」京子はうれしそうにじんじんにキスをすると、すぐに近所の産婦人科へと
出かけた。結果、6週目。超音波で見るとすぐにそれとわかるくらいになっていた。
予定日は97年1月2日。
「なに〜解禁後1個目の卵で出来たワケ? しばらくは生で楽しめると思ったのに〜」
じんじんはうれしさとつまんなさ半々といった感じだった。そしてこの一言。
「しかし、こんなに出来やすかったとはね〜、長い間避妊してきた甲斐があったってもんだ」
その日、鈴木さん、のりちゃん、さいかー、だびる、大山君を呼び
近所のイタリア料理屋で祝杯を上げた。普通なら安定期に入ってから発表する所を
6週目でその事を伝えられる気の知れた友達がいるというのは、うれしくもあり
頼もしい事だった。もし万一の事があっても彼らが支えになってくれると思えばこそ
この時期に、このうれしいニュースをすぐ伝えたかったのだった。

-つづく-