サーキットのイヌ 第一幕  失速! 街道グランプリ


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Posted  : 87/10/05 10:05:08
From    : JN1KXV
Subject : サーキットのイヌ(第5回まで)

 今日は街道レーサーのお祭り《街道グランプリ》の日である。このレースは,
『ナンカスイテル カンナナ』を一周し,湾岸を使って葛西から葛西まで来るコースを10周する
というまぬけたものである。
 スタートの日の出前,スタート地点の葛西トラックターミナルにはぞくぞくと全国
の走り屋たちが集まってきた。そのエンジン音は真夜中の静寂を打ち破り,遠く水元
の町まで聞こえるという。
 今年は,去年につづき2連覇を狙うTOYOTA2000GTのピーターソンはも
ちろんのこと,ナチス連合の早瀬左近など強豪にまじり,一匹狼と思われるロータス
ヨーロッパの風吹祐矢もこの「街道グランプリ」に参加するという。
 しかし,何といっても今年の本命は最近第七方面で頭角を著わしてきた走り屋集団
『5252』であろう。
 スタートを前に5252の面々は葛西のココスで悠々「チャ」をしていた。

「そーぉなぁーん」
 まぬけた声をだしているのはシャレード・ツーサムスペシャルを駆る『ジャマモト』
だ。
「その『そーなん』ていうのやめたほうがいいよ」
 ソアラTWINターボ+カロッツェリアチューンのジャマカワくんもいる。
「れすか れすか れすか れすか飲みたぁい」
 とジャマモトにねだっているのは3000ソアラを駆る闇の帝王『みちこ』である。
「ZZZ・・・」
 寝ているのは,クレスタに警電を積み確実な交通情報を駆使して走り,時にはガセ
ネタを流して敵の走りを阻止する、走る国家権力『板根』。
「ぜったい山川豊に似ているよ。だから山川」
 バカなことを言っているのは,クラウンステーションワゴンのくせにツインカム+
スーパーチャージャー、「走りはガスで決まる」とハイオクにこだわる
『添加剤ちよみ』だ。
「そうかなぁ・・・」
 ちよみに答えているのは,かっ飛…ばないスターレットの『バケウチ』
 バケウチがちよみと話しているのをいい事に,コーヒーに塩をサラサラしているの
がセリカXXエクストラターボ(但し”S”)の『アキジャマ』。
 その隣で,なにやら指先をフーフー吹きながら黙々と書き物をしているのは
「EFIで5速もあってリアワイパーもついてて,しかもFMが聞ける」というのが
自慢のリヘルタビラ『大じゃまだ』。

                                                   つづく
Posted  : 87/10/05 10:30:46
From    : JN1KXV
Subject : サーキットのイヌ 第6話

 他にもいろいろいるのだが、はっきり言って話が進まないので場面を葛西トラック
ターミナルに移そう。
 まもなくスタートの日の出である。各グリッドには早いもの順で出走車がついてい
る。
 5252の面々は茶の精算が遅れてほとんど最後尾からのスタートとなった。
「200円くらい少なかったですぜぇ」
 まだジャマモトが文句をたれている。かわいそうに。ジャマカワ君がコーヒー代を
ゴマかしたために彼は余分な出費をしていた。
「オイオイよく見ろ、もう日が出ているぞ。」
 オオジャマが東の空を指した。
 すでにトップのピーターソンはスタートし、環7に入るところだ!。
「ゲゲェベム」
 みんな、前の車をけちらしながら、無線を使った連携で次々と先行車をパスしていっ
た。

Posted  : 87/11/05 18:00:50
From    : JN1KXV
Subject : サァキットの「イヌ」  7ダッタカナ

5252の車は一団となって悪質なブロック、割り込みを繰り返しながら着実に順位
を上げていった。
一方トップを走るピーターソン
「オホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ!今年もミーのブッチギリの
  ようね! オホホホホホホホホホホホ!」
  ストリートバージョンのトヨタ2000GTでこれだけの走りをするピーターソン。
去年の優勝がフロックでなかった事を示す。しかし、そのバックミラーにパッシング
を浴びせる一台の車が現れた。
「ポルシェはハヤセサコンね。あいつ、カレラRSじゃ...ゲッ!」
  ピーターソンが驚いたのも無理は無かった。
  そのポルシェは松本連続陸橋上、一瞬にして2000GTを抜き去っていった。
「959....」
  唖然とするピーターソンの視界で小さくなった959は一発バックファイアすると
鋭く最終コーナーを曲がって行った。
「あのやろう、金にモノをいわせてあんなバケモノを手に入れたのか・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おいおい、あれハヤセサコンのカレラじゃねーか?  ざっ」
「あ、 ほんとだ  ざっ」
  5252の 最後尾を走っていたのりちゃんとジンジンが、おかじま電器の駐車場
にポルシェを発見した。
『ミミーーン・・』
  二人はバイクを降りてカレラに近付いた。
「なになに? 私は959に乗り換えた。RSは要らなくなったのであげます??
  御自由にお持ち下さい・・・」
「あぁーー? マジかよー」
「でもキーついてるし...」
「もらおっか!」
「マ、イッカ!」
『ガルンッ!』
  のりとジンジンはARとスズキラブモリハナエバージョンを捨てて、そのポルシェ
に乗り込んだ。
「おお!ポルシェよ! いつもおまえは私の期待に答えてくれる・・・
  ナーンチッテ」
  ジンジンはハヤセサコンのものまねをしながら5252を追い掛けた。
 

カイドウグランブリ  ハヤセサコンノ959 ブッチギリデ オワルカ?!  5252ノ オイアゲハ?!  マテ、ジゴウ!!!

Posted  : 87/11/07 00:58:36
from    : JN1KXV
subject : サーキットの「イヌ」  8

  カレラは青戸橋の手前でDTKのL.V.に追い付いた。
「おーい、DTK  ざっ」
  ガラスにはスモークが張って有るので隣にいる事は分からない。
「JK1DTKです どうぞ  ざっ」
「シグナルGPやろーぜ  ざっ」
「え? え? どこどこ?」
「こっこっだっよーん」
『ガゥガォオォーン!』
  窓をあけて手を振ってやるとDTKは後ろや反対側ばかり見ている。
「おいおい、もう青になるゾッ  ざっ」
「え? え? あ・」
  ガウーン ポヒャヒャヒャ カレラはDTKがキョロキョロしているうちに後輪から
白煙をあげてオシリフリフリ青戸橋を上っていった。
「ヒエー、パワー有り過ぎ!!」
 「あ・あ・  クラッチプレート分離。ローギア投入。サイドブレーキ解除。・・・」
『パーーープップーーーー』
  後ろからクラクションを浴びながらもDTKは、確認を怠らない。
「左右、後方よし。半クラッチ状態になります。リベルタビラ発進!!」
『ゴホ  ゴホ  ガッコン』
「ギア再確認、サードギアをローギアに投入しなおします。クラッチプレート
  分離・・・」
『ぱーーーーー  ぱぱーーーーー !!』
「エンジン回転数 2000回転を維持。クラッチプレート接続。リベルタビラ再発進
  !!!」
  しかし、信号は空しく赤に変わっていたのであった。

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一方トップを行くハヤセサコンは既に中央線をくぐっていた。
「この959有る限り、ナンピトタリトモ・・・ あれ? ちがうなぁ、ま、イッカ!」
  あまりに959が速すぎるのでバカになっているのではないか・・・
  ハヤセサコンは自分のセリフに赤面しながらアクセルを踏んだ。

  豊玉陸橋上では、既に優勝を諦めたのかピーターソンがロータスヨーロッパをブロッ
クしていた。
「オホホホホホホホ! ミーのブロックがかわせて? オホ、オホホホ!」
「ピーターソンめ、あれだけのウデが有りながら・・・    テメエ、そんな事しかで
  きねぇのかーーっ!」
  フブキは狼がほえる絵を背負いながら怒った。
  ピーターソンの執ようなブロックでペースダウンを余儀なくされたロータスの背後
にパッシングをしながら迫って来る一台のフェラーリディノ・・・
「おうおう、フブキまだこんなところでモタモタしてたのか?」
「おう、オキタ! おまえと二人でならピーターソンのブロックもかわせる。」
「いくか!」
  彼らは百数十キロのスピードで走りながら窓も開けずに会話をする事が出来た。
 
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「5252、52ー52ー  荷馬車はゆぅれぇーるぅー  ざっ」
「もたもたしてんじゃないのっ!  ざっ」
  5252は川越街道の手前を下位の車共々走っていた。
「だってぇ、渋滞してきちゃったよぉ・・・  ざっ」
  いくら5252の集団でも渋滞には勝てなかった。
「いたねチャン、赤灯付けてサイレン鳴らしなよぉ  ざっ」
「そしたらみんなで付いて行くからさぁ  ざっ」
  彼らは無線が無いと会話が出来なかった。
「完璧に動けなくなる前にそーするかぁ・・・」
いたねは回転灯を取り出すとサイレンを鳴らした。
『ウゥウーーー・・・・』
「イヨッ 待ってました!!  ざっ」
  傍から見ると覆面パトがレーシングスクールをやっているようであった。

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「ん? いたねチャン 回転灯付けたのかな?  オレもやろっと・・・」
  ジャマかわクンはソアラを止めるとトランクから赤色回転灯を取り出した。
  ゴタゴタ用意をしていると、車が連なって発進出来ない状態になっていた。
「もー、せっかく用意したのにぃ・・・  サイレン鳴らしちゃうから・・・  緊急
  車両です。どいて下さい。緊急車両です。」
『うーーー・・・』
  ところが運悪く警視502が路地から出てきた。
「警視502から志村」
「警視502から志村どーそーぉ」
「志村ですどーぞ」
「おそれいりますぅ、貴署にソアラの覆面有りますかぁどーぞ」
「ソアラの覆面ですかぁどぉぞ」
「そのとーりソアラですどーぞ」
「志村署にはそのような覆面はありませんがぁ・・・」
「警視502了解、現在環7上で白のソアラツインターボ、この車両赤色灯をつけ、
  サイレン吹鳴しております。警視庁いかがどうぞ」
「警視庁了解、現在調査中なるもソアラの覆面は聞いた事が有りません。よってその
  不審車両のマルウン職質願います。」
「警視502了解」

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「ギャハハハハ  5方面聞いてみな!  ざっ」
ウケたのは5252であった。

コノハナシモ バメンガ オオクテ タイヘンダナァ タカハシヘンシューチョーニ オコラレチャウッ テワケデ マテ ジゴウ!

Posted  : 88/11/22 20:13:25
From    : JN1KXV
Subject : レンサイサイカイサーキットのイヌ

  ハヤセの959は早くも湾岸線大井南インターに到着。東京港トンネルまでの3キロ
の直線をフル加速していった。200キロものスピードでトンネル前のコーナーをク
リアすると、東京港トンネルをわずか20秒たらずでくぐりぬけてしまった。
「むう」
  ハヤセはトンネルをぬけたところでフルブレーキングをしいられた。
  中央車線でエンコしているバイクがいたのだ。フブキなんかだったらどやしつけて
いる所だが、ハヤセは何事も無かったかのように車線変更し葛西へと向かった。

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  フブキの一団が松原橋の交差点を通り過ぎると、待ち構えていたかのように1号か
ら2台の車が左折してきた。一台はブルーバード、もう一台はカルディア???
いやいやセイシヲクーナ?? あーいやいやコルディアGSRターボレーシングだ。
  こんな所から現れるヤカラはオゥKLとのりあにしかいない。二人は昨夜目黒エン
ペラー本店にシケこんでいたためスタートに遅刻したのだった。そこでずーずーしく
も最初の半周はパスしてトップグループにのりこみ、ファーストラップだけでもアタ
マをとろうという考えだ。
  しかし、したたかに速い959を見逃している事に気付いていなかった。最初に
轟音をともなってやってきたのがフブキたちのセカンドグループだったのだ。
「むう」
  ピーターソンは突然現れてパッシングを浴びせてくるコルディアをルームミラーに
見た。
「なんだあいつは。あんなやつ出ていたか?だいたいなんていう車だろう???
  まあ、なんでもよい。このピーターソンに仕掛けてくるとは身の程知らずもいい
  ところ。相手になってやるわ。オホホホホホ!」
  ピーターソンはフブキたちに抜かされたためセカンドグループのドンジリにいたの
だった。
「やはりピーターソンやフブキたちがトップか・・・ハヤセはどうしたのだ?」
  のりあにはブツブツ言いながらもしつようなパッシングを続けた。
「むう。あの車まだパッシングを続けている・・・ 眩しくてしょうがないわね」
  ピーターソンはスッと左の車線によけた。
「ガハハハ。まいったかぁ」
  のりあにがエコノのセカンドにシフトダウンし加速に移るとピーターソンはまた
ムリヤリ右車線に戻ってきた。
「うががっ」
  のりあには急ブレーキ。後ろをはしっていたオゥKLのブルーバードもつっこみそ
うになる。
「てめー!」
  のりあにはまたパッシングを始めた。
「オホホホホホホホホ!その程度のウデでミーのブロックがかわせて?」
  ピーターソンはしつようなブロックでのりあにたちをからかっていた。が、その
ピーターソンの自信は大きな誤算となった。
  後ろばかり気にしているうち、フブキとオキタはずいぶんと前へ行ってしまった
のだ。

          そ・れ・だ・け・な・ら・ば・ま・だ・い・い・が

  渋滞をぬけてきた5252軍団の射程距離内にまでポジションを落としてしまった
のだ。
 

Posted  : 89/01/24 18:27:52
From    : JN1KXV
Subject : オマタセショウセツ ガクトクン & サーキットノイヌ

「げげっ・・・ここは首都高湾岸線じゃないか・・・」
  学徒君が振り返ると後ろには 東京港トンネルが大きな口を開けていた。
「こんなところでモタモタしていたら後続車にはねとばされてしまう・・・」
  学徒君はあわててセルを回した。しかし全開の状況から一気に停止したものだから
エンジンは完全にカブっていた。
「かかれっ」
  しつこくセルを回すこと一分間、FZRのインラインフォーはようやく目を覚ま
した。その時、学徒君の脇を物凄い勢いでかわしていった車があった。
「うひゃっ・・・」
  学徒君は首をすくめた。
「危ない危ない・・ん?あのテールは見覚えがあるぞ・・959だっ!」
  車好きの学徒君は現在の状況なんかどうでも良くなってしまいそのポルシェを追い
始めた。
「959なんてそうザラにおがめるもんじゃねー」
  学徒君は葛西のインターの手前で959に追い付いた。すると959は葛西のイン
ターで降りるではないか、
「ナイスタイミング!」
  学徒君も左にウインカーを出すと959に続いて高速を降りた。
 
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
「むう・・・」
  環七に出た早瀬は東京港トンネルの出口でエンコしていたFZRが付いてきている
のに気付いた。
「なんか気になる」
  早瀬は車を左に寄せて止まると、外に出た。学徒君は自分を意識して959が止っ
たとは考えていないので「ラッキー」と思った。
  学徒君は959のすぐ後ろにFZRを止めるとメットを脱いだ。
「なんか用か?」
  背後から突然声をかけられた学徒君はびっくりしてメットを落としてしまった。
「あ、いや、その・・・959がカッコイイナーと思って・・・」
  学徒君は頭をボリボリ掻いた。
「フフ・・・どうだね暇ならお茶でも飲まないか」
  意外な展開にさらにびっくりした学徒君は落としたメットを蹴飛ばしてしまった。
「ぐう・・・」
「かなり君は車が好きそうだね。」
  ココスに入った早瀬と学徒君は車談義に花を咲かせていた。
「街道グランプリって知っているかい?」
「あ、雑誌で見た事があります。」
「フフ・・・何を隠そう私は今それの最中なんだ・・・」
「ええっ、じゃあこんなところでお茶なんか飲んでいたら遅れて・・・」
「いやいや、ブッチギリのトップでね・・・まあ少しくらいハンディーを付けないと
  勝っても面白みが無い・・・ しかし君もいいバイク乗ってるねぇ、1000cc
  だろ?加速だったらボクの959でも追い付けるかどうか」
  学徒君は頭を掻いた。
「ははは、君は良く頭をかくねぇ。もしかしてメットかぶっていててもかいちゃうん
 じゃないかい?」
 学徒君は更に頭を掻いた。
「君は車は無いのかい?あれば今からでも街道グランプリに参加できるぞ。」
「ええっ?ほんと?」
  20分後、蔵前橋通りから環7内回りへ左折する1台のセドリックグランツーリスモ
SVがあった。もちろん運転手は学徒君である。

 一方、志村署に捕まってしまったジャマかわくんはコッテリとしぼられて警察から
出てきた。
「まったくずるいよなぁーぶいぶいは逃げちゃうしさぁー・・・とにかく追い付かな
 くっちゃ」
 ジャマかわくんはソアラに乗ると環七には入らずに裏道に入った。
「こっちもズルしないとやってらんないよーぶつぶつ・・・」
 イライラ運転していると事故を起こしやすい。ジャマかわくんは一時停止無視で突っ
込んできたスクーターとぶつかってしまった。しかし、なんとスクーターは一台では
なく20台以上の群れであった。
「げげっ」
 ジャマかわくんが外に出る間も無くそいつらはソアラに群がってきた。
「なんだなんだ?そっちが悪いんじゃないかぁ!」
 しかしそいつらは容赦なくソアラの車体をへこませるとぶつかったスクーターを
フロントガラスに投げ込んだ。
「うぎゃーー」
 幸いジャマかわくんには当たらずにすんだもののソアラのガラスはメチャメチャに
なってしまった。凹んだドアを開けて外に出たときにはすでに誰もいなくなっていた。
「どーすんのーこれぇー」
 ジャマかわくんは座り込んでしまった。

ガクトクン ト サーキットノイヌ ヲ ユーゴーサセテ テヲヌコウトイウ ズルイヤリカタ ・・・ マテ ジゴウ!!

イゴ ガクトクン ノ レンサイ ハ ナクナリマス。 ゴセイエンアリガトウ ゴザイマシタ。
ガクトクン ノ ハナシ ハ サーキットノイヌ ノ ナカデ ススミマスノデ ゴアンシンヲ!

Posted  : 89/01/26 20:26:18
From    : JN1KXV
Subject : サーキットのイヌ 11

  セカンドグループは渋滞のおかげでダンゴ状態のまま首都高に突入した。
「ここからは首都高と言ってもタイトなコーナーも無くパワー勝負になる。」
  フブキのロータスヨーロッパは純粋なスポーツカーと言っても所詮時代遅れであっ
た。
「おほほほほほほほほほほ道をお開け!」
  ピーターソンのトヨタ2000GTは世代は同じだが排気量に差があり、フブキは
いいように弄ばれる・・・ところが・・・
「きゃーーーーーーーーーどいてどいてーーーーーー」
  その横をみちこのソアラが半ば暴走状態でパス。  更にクラウンステーションワゴン
がテールツーノーズで駆け抜けて行った。一瞬立ち遅れた板根がぎりぎりでピーター
ソンのブロックをかわす。
「とりあえず2000GTは押さえたから来てもいいよー」
「ほーい」
  5252は一列に並んで次々と路肩からロータスと2000GTをパス。ピーター
ソンが慌てたスキを捕らえフブキのロータスも一気に板根の前に出る。
「な・な・なんだコイツラ・・・ここからはパワーの勝負ぅ・・・どけどけー」
  怒り狂ったピーターソンは猛然とダッシュするが、5252の大群を抜く事は困難
であった。
「ここからはパワー勝負で完全に離されると思っていたが・・・ふっふっ」
  フブキはチャンスを与えてくれた板根に手で合図をすると5252の車を1台ずつ
抜きにかかった。
「ロータスが出るぞー」
 板根の一声で全員がペースアップ。5252はロータスと2000GTを置き去り
にして東京港トンネルを抜けた。かに見えたが・・・
「ちょっとまってぇー!!」
 ばけうちのスターレットがフブキ達をパスするどころか一連のバトルの前、すでに
遥か後方に取り残されていたのだ。
 1300ccの3速オートマでは高速道路のバトルなどできるはずも無かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あ、もしもしー星くん? あのさーソアラこわされちゃってさー困ってんだけど」
  星君の家に電話が有ったのはみんながちょうど1周目を終えたころだった。
「ほよよーー」
  寝起きの星くんは要領を得なかった。
「ちょっと星くんきいてるー? 一昨日取りに行けなかったクラウンさーこれから取り
  に行くからTAX来て!」
「ほよ」

  ジャマかわくんは周期的な音を供なってTAX八潮に入ってきた。へこんだフェン
ダーがタイヤに擦れているようだ。
「星くん早く!クラウンはぁ?」
「ほよよー」
  星くんはまだ目覚めていないようだ。
「ほよよーーじゃないでしょーがっ!」
  ジャマかわくんは星くんの背中を押してズンズン中に入った。
「はやくしないとみんないっちゃうよぉー」
「ほよ、どっかいくの?」
「どっかいくのぉ?? 今日は街道グランプリの日なの!」
「あっ・・・あー、あー・・・ ハハ・・・忘れてた」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  環7の江戸川区、葛飾区は結構空いていた。ばけうちが2周目板橋区に入ろうとい
う時。ピッ!
「ん?誰だこんな時にコネクトしてくるやつは・・・」
バケうちはスターレットを止めるとディスプレーに目をやった。

           *** CONNECTED to JO1PPG

           すに、来て!

「げげっ特命だ!つき変換ドウシタノあれれ半角だまいいや、リターン」

          あなたの世界が知りたかったの・・・
          いま環7と日光街道の交差点にいるのだけど、マークツーがうごかなく
          なっちゃったの
          ワカッタ スグイクカラ シンジテマッテテ
          うん。きをつけてね。愛してる。
          ア・イ・シ・テ・ル・!

「と、このスターレットじゃシングルシートだからまずいな・・・とりあえずうちに
  帰るか」
  ばけうちはUターンすると放射11号から自宅へ向かった。

「ママー、クラウン借りるからねー」
  ばけうちは親の返事も聞かずにクラウンを出動させた。目黒エンペラーの交差点に
来ると、内回り車線にばかはしのマーク2がハザードを出して止まっていた。
「つきちゃん!」
  ばけうちは車を止めるとマーク2に駆け寄った。
「20分もかかったわ・・・なにしてたのかしらブツブツ」
  しかし、ばかはしはドアを開けるとばけうちに抱き着いた。
「すに!寂しかったの・・・」

 ばかはしの車はエンジンヘッドが割れていて使い物にならなかった。
「いったいどんな乗り方したんだ?・・・とにかく家に帰ろう。」
「いや!」
「だってエンジンがイカレちゃっゃってるんだからしょうがないだろ」
「だって・・・あなたは今レース中なのでしょ・・・私を乗せて行って!」
「おいおい、ムチャを言うな。だいたいレース用のスターレットは家に置いてきちゃっ
  たし、もし事故に巻き込まれて月ちゃんが怪我をしたら・・・」
「私死んでもいい・・・だから連れていって!」

 ばけうちのクラウンが再び環七に戻ると後ろから物凄い勢いで迫ってくる車があっ
た。
「ちょっとちょっと星君・・・こっちは新車なんだから・・・」
「だいじょぶだからついてきなって」
  星君は完全に目覚めている様子だ。
  星君はハイビームにすると全開で陸橋を駆け下りた。
「あのひと達もレースに出ているのかしら?」
  バックミラーに写るライトで、ばかはしも後続車に気付いた。
「うーん・・・トップからはかなり遅れたから、そうだとしてもたいして速いヤツじゃ
  あないな」
  はげうちがそう言い終わると同時に星君のソアラは爆音とともにクラウンの横を通り
過ぎていった。
「でも、ちょっとは速そうよ」
  ばかはしはバケ内の顔をのぞき込んだ。
「いっちょうヤッてみるか・・・」
  ばけ内は右に車線を変えると星君のソアラを追った。
 
「ちょっとさー見えなくなっちゃったよー」
  そのころジャマかわくんがようやく陸橋をこえてきた。
 

トイウワケデ イキナリ ドンドン カイテル サクシャダガ ・・・   トップノ アラソイハ? ガクトクン ト ノリ ノ カンケイハ??
マテ ジゴウ!!

Posted  : 89/10/30 20:34:08
From    : JN1KXV
Subject : サーキット ノ イヌ (カンケツヘン)

ゴールテマエニハ スデニ ダレモ イナカッタ
カンナナイッシュウ ヤク 70キロ
ソレヲ 10シュウ
パリダカ ノ SS ヲモ コエル ナガサ ノ シガイチラリー ハ マサニ シトウダ

オモッタ ノ ガ マチガエデアッタ
オチャ ヲ シニ ジョナサン ニ ハイッタママ レースヲ ワスレタ 5252
959 ヲ ミセビラカスタメニ 上馬 ノ コーサテン ヲ サセツシテ シブヤノホーニ イッテシマッタ ハヤセサコン
ポルシェカレラ ハ ウッタホーガ トクダ  ト  トチュウデ オリテシマッタ ノリ ト ジンジン
ツキコ ヲ ノセタママ ドコカヘ キエサッテイッタ スニ
ワンガンキョウ デ ナミ ニ ノマレテシマッタ (?)ピーターソン
シカシ サイゴ マデ ハシリツヅケテイタ トイウ フブキユウヤデサエモ ジツハ マチガエテ 11シュウシテイタノダッタ
アマリ ノ バカサ カゲンニ ヤタベノオヤッサン ハ カエッチャッタシ
オキタ ハ デルマモナク シンデイタシ
ハマ ノ クロヒョウ ハ デバンヲ ウカガッテイルウチニ レースガ オワッチッタシ
コマッタモノダ
フブキユウヤ ハ ナンノタメニ コンナニ ガソリンヲ ツカッタンダ! うおおおおお ト ホエタトカ ホエナカッタトカ ・・・
シカシ マダ ケンアン ノ 学徒クン ガ ミカイケツノママ BBS ガ ナクナッテシマウノデアッタ !
ジャンプ ヤ マガジン ノ レンサイウチキリ ノ マンガヨリ ヒデェナ コリャ
デハ JI1XPI-MB デ オアイシマショウ
サヨナラZ2
サヨナラ ヨコハマ
サーキット ノ イヌ ハ エイエンデス !
うおおおおおおおおおおお
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

すにのばかぁ

- 完 - (?)


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