大ガードの夜景 第77話  『 持つべきは友 』

京子実家から、両親と弟、小春が到着したのは、それからしばらくしてからだった。
じんじんが事を説明すると、みんな普通に泣いた。
京子母はまさに泣き崩れた。
そのワンシーンはまるでドラマの一場面の様だった。
家族の死、という意味では、じんじんも立場は同じであったが
やはり子供の死というのと、妻の死というのでは、感じ方も違うだろう。

じんじんはみんなと少し話をすると、一階のロビーに降り大山君に第一報を入れた。
「そうですか・・・」
大山君は特に慌てる様子もなく、神妙な声でそう言った。
彼は友達相手でも敬語でしゃべる事が多かったが、その時の声色は妙に丁寧であった。

そこから先は、本当に事務的に事が進んだ。
じんじんたちが進めたというより、進めさせられたという感じであった。

11時過ぎ、病院が手配してくれた業者の黒いエルグランドに乗り、京子無言の帰宅。
京子実家の前に車がつくと、どこでどう話を聞いたのか近所の人が数名現れ
車から運び出される京子の姿を神妙そうな顔で遠巻きにして眺めていた。
じんじんは、見ていた人たちに軽く一礼し家に入った。

午後にはじんじんの地元である葛飾の葬儀社が打合せに現れた。
葬儀社の人もじんじんの親の実家とは懇意にしていた事もあって
いろいろ値引きしてくれた。
それでもやはり、即金での支払いは出来ないので生命保険の内容を担保に
という形で引き受けてくれた様なものだった。
もちろん商売であるからあたりまえなのだが、じんじんにはそういう事務的な作業が
妙に苦痛だった。

大山君が現れたのは、葬儀社が帰ってすぐだった。
じんじんは朝の大山君との電話で「来てくれ」とか「行くから」とか、そういう話は
一切していなかったので、彼が突然現れたのは少しびっくりした。
亡くなったという話を聞いて、とにかく行こうと思い来たのだと言う。
もしかしたら手伝える事があるかもしれないし、無くても京子に会うだけ会いたい
という気持ちだったらしい。
じんじんの方は、丁度、葬儀の日程が決まった所。これから各方面に連絡を入れるべく
準備しようとしていたので、大山君が来てくれたのは本当に助かった。

二人はじんじんのアパートへ行くと、住所録を広げ次々と電話をかけた。
大山君は自分には関係ないじんじんの会社関係などにも積極的に連絡してくれた。
大山君が来てくれたおかげで、連絡の手間という面から見れば純粋に半分で済んだ
わけだが、じんじんはそれ以上に大山君が来てくれたことが純粋にうれしかったし
もし彼が来てくれなければ、誰もいない部屋で一人、半泣きをガマンしながら連絡
しまくることになっていたわけで、それを考えたら、感謝とかそういう言葉では
言い尽くせない気持ちになった。

- つづく -