大ガードの夜景 第63話  『 正月早々 』

三人で迎えた初めての正月、佐野厄除け大師経由喜連川第二温泉経由南那須の
じんじん実家と走ったのだが、最初の佐野でヒトゴミ疲労のため厄除けの列になんか
並べずそのまま撤退、その疲れが最後まで尾をひいてしまった。
南那須も夕飯食べずに撤退し、さっさと家にもどった。

その晩、じんじんの足に異変が起きた。右足のももの皮膚がなんかぴりぴりする
というのだ。ジーパンで毛が引っ張られた様な感じ。
乾燥肌かとも思ったが痛みは段々増して次の日には腿の毛がすべて針になって
ささっているかの様な激痛となった。
痛い部分に表面上の変化もないし、一体何が起きているのか
医者に行くにしても、何科に行ったらいいか見当もつかなかった。
じんじんは痛くて一睡も出来ず次の日の朝を迎えた。
相変わらず痛いのだが見ると、プツプツが出来はじめている。
いつも見た所で何の役にもたたない家庭の医学みたいな本を開いてみたら
どうも「帯状疱疹」らしい事が分かった。
「初めて役にたった!」と急いで皮膚科へ行った。

京子はダラダラしていれば平気な様子で、ひたすら桃太郎電鉄をやりつづけていた。
出かけられないので、そういう正月となったが、ある意味正しい正月っぽいかも
と京子は思った。

1/5、京子とじんじんは小春を保育園に預けると、暮れのCTの結果を聞きに
厚生年金病院へ行った。
ずっと異常なし異常なしと言われていた割に、リンパ腫れたり体調悪かったりして
いたのだが、その原因がわかった。
というか、医者の方はわかっていたに違いない。言ったところで何も出来ないから
異常無しと言っていただけだったのだろう。
がんは確実に進行していたらしく、肺、肝臓など数カ所に転移が認められたと
金子医師は言った。治療は難しい、と付け加え、具体的な話は一切なかった。
おそらく体調の悪さから言って、もう隠せないと思い告知したのであろう。

京子とじんじんは言葉も無く、病院を後にした。
なんかぱーっとウサばらししたいね、とは言ったものの5時には小春を迎えに
行かなければならず、飯田橋からどこに行くということも出来なかった。
二人は仕方なく当初の予定通り秋葉原へ行き、じんじんの通勤用ディスクマンを
買って帰った。

「多分そんなことだろうとは思ったけどさ」
京子はブツブツと言ったが
「でもなんも出来ないんだから、今まで通りにしてようよ」
と特段気にしてない様に言った。
さすがに、得意の「ま、いっか」で済ませられず
ひきずっている様子だった。

- つづく -