大ガードの夜景 第21話  『 はるちゃんへ 』

出産予定日が1月2日で、新春に登場予定だった事から、二人はお腹の子供を
「はるちゃん」と呼んでいた。なのに治療のため誕生日を決められてしまい
ぜんぜん新春ではなくなってしまった。
しかし、これはこれで名前をつける材料になるという事をこの時は二人とも考えてはいなかった。
がん宣告され即時入院となった京子は、その日、病院のベッドで10年日記の追記用ページへ
「はるちゃん」へのメッセージを残した。
がんの事は気にはなったけど、治療方針も決まっていない今、その事を考えても
単に不安が増すだけで、いい事無いと京子は思った。
今は明日の手術の事、子供が無事生まれて来る事を思うべき時であった。
とは言うものの、京子の頭にはいろいろな事が浮かんで来て、なかなか寝つけなかった。
そうこうしているうちに病室のカーテンを通しても空が白んでいるのが分かる時間になってしまった。
「ふぅ」京子は体を起こすとため息をつき、静かにベッドから降りた。
病室の端まで行きそっとカーテンをめくって見ると、雲一つ無い空が広がっていた。
京子はそのまま外を見続けていたが、見えているビル群が朝日を浴びて橙色に光り始めると
「きっと今日はうまく行くさ」とつぶやき、また静かにベッドへと戻った。

-つづく-

今回は番外編として、京子の10年日記のメインページから
出産当日の朝に書かれたメッセージを紹介します。
追記用ページの方は「はるちゃん」への手紙の様な物だから
「はるちゃん」が分かる様になるまでそっとしまっておく事にします。
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はるちゃん 今日、キミの誕生日は、とても良い天気です
すてきな朝焼けでした。青い空です。さあ、がんばろうね
おめでとう。 私達のところへ ようこそ。
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